第40章 好きな人だったら、俺にもいんよ
天の前には、2つの料理が並んでいた。
1つは、美味しそうなローストビーフ。もう1つは、刺激物。
「わぁ。どちらも凄く、美味しそうですね」
相変わらず、天のプロ根性には頭が下がる。
懸命に笑顔を作る天を中心に、4人は座っていた。壮五は、早く食べてくれ。と言わんばかりに満面の笑みを浮かべていた。
他の3人は一様に、目頭を押さえて目を瞑り、必死に涙を堪えている。
「じゃあ早速戴く事にしようかな。
味覚を失う前に、ローストビーフから食べたいと思います」
「??
あはは!カレーを食べて味覚を失うなんて事、あるわけないじゃないですか」
「うん。ないだろうね。普通のカレーだったら」
「あはは、九条さんって面白いんですね」
「何も面白くないよ」
天の怒りボルテージが 静かに上がっていくのを、TRIGGERチームと私だけが察知していた。
「ほ、ほら天!とにかく、俺らが作った肉を食え。な!」
「そうそう!自信作だよ!俺がソース、楽が肉を担当したんだ」
「見てたんだから知ってるよ…
でも、凄く美味しそうだから 貰ってもいい?」
「いいなぁー!俺もがっくん達の肉食いたい!」
「おう!食え食え!元はと言えば、お前の為に作ったんだよ」
「やっぱり彼の為に作ったんだ…へぇ」
何となく不機嫌になってしまった可愛らしい天の横で、楽は大振りな肉切り包丁を手に持った。そしてローストビーフに刃を入れ、極力 薄く切り分けていく。
そこに龍之介がソースをかけ、完璧な1皿が出来上がったのだった。
環の皿だけ、やけに山盛りで。楽と龍之介の優しさが、量となって表れているようだった。
「いただきます」
天は丁寧に手を合わせ、肉を口へ運ぶ。口へ入れた瞬間、ぱっと顔が明るくなる。
そして、感想を述べようとした時。同じくローストビーフを食べた環が叫んだ。
「うっっめえーーーー!!やべぇこれ!超美味いって!なぁてんてん!!」
「………良かったね」
自分の感想コメントをぶっ潰された天は、とてつもない黒い笑顔を浮かべていた。