第1章 もしかしなくても、これって脅迫ってヤツですか?
「単刀直入に言う。
お前には、うちのTRIGGERのプロデューサーになってもらう」
『無理です』
社長が言い終わるや否や、私は間髪入れずに返答した。
「「………」」
2人が絶句しているのを良い事に、私は自分の聞きたい事をぐいぐい問い掛ける。
『それよりも、私が Lio だという証拠でもあるのでしょうか。あるなら教えて頂きたい』
社長は、すぐに答えをくれた。
テーブルの上にボイスレコーダーを転がして、スイッチをオンにした。
ザーザーというノイズの後、よく聞き慣れた声が流れてくる。
「はい、…はぃ、そうです、ええ…間違いありません、うちで働いている中崎エリは…
元アイドルの、Lio 本人です」
『……社長の、声』
機械から流れて来たのは、うちの事務所の社長の声だった。
私がLioだと知っている、数少ない人間の一人だ。
社長の声…怯えているようだった。
『…社長に、何をしたんですか』
「お前が考えるような事はしていない。
…ただ、お前の事務所の運が悪かっただけだ。
押さえていた箱が、急遽 他の大手事務所が使う事になったり。
仮契約までこぎつけていたアイドルが、他の大手事務所に鞍替えしたり。
そういった不運が、続いたらしいな」
『……なるほど。 その “ 他の大手事務所 ” というのが
御社。というわけですか』
八乙女宗助。
噂に違わぬ、非道っぷりだ。