第1章 もしかしなくても、これって脅迫ってヤツですか?
「アナタがこちらの要求を断れば、Lio の正体を業界にリークするわ」
「業界は、金になる駒をみすみす逃したりはしない。お前がどこに逃げようと、必ず追いかけて来て鳥籠にぶちこまれて死ぬまで飼われるぞ。
知った事ではないが、お前はそれが嫌で…2年間逃げ回っているのだろう?」
……ははーん。
『もしかしなくても、これって脅迫ってヤツですか?』
「物分かりがいいな」
「っていうか、気付くの遅いわね」
私がTRIGGERのプロデューサーを断れば、きっと家にはマスコミが押し寄せ、スカウトが殺到するのだろう。
言うまでもなく、愛すべき安寧とはおさらばだ。
そして、今まで逃げ回っていた事情を 嫌ってほど問い詰められる。
私がどれだけ拒否したところで、またステージに上がれと せっついてくるのだろう。
そんなのは…
吐き気がする。
『いくつか質問があります。
どうして、私なんですか?彼らにはすでにプロデューサーがいるはずです。実際マネージャーだって、姉鷺さんがここにいます。
何故わざわざ、私のような外部の人間を?』
八乙女社長に質問したつもりだったが、代わりに姉鷺が答える。
「作曲家、プロデューサーに、振付師 さらにはボディーガード。これらを全部一人にまとめられたら、人件費が浮くでしょ?」
この人…なんだ?ふざけているのだろうか。
『…運転手、も追加しておいて下さい』
ちょっとだけ乗っかってみた。
「お前有能さ。そして楽曲や振り付けが欲しいのは事実だ。
だが私が一番気に入ったのは…。
アイドルを上に押し上げる為になら、手段を選ばないところだ」
『……なるほど』
どうやら彼は、私が “ 枕 ” している事も知っているようだ。