第39章 組み紐をひいたのは
今回はドッキリだった為、ジャッジは引き分けとなった。
その場にいた全員で、去っていく豚と田中さんを見送った後、また雑談タイムとなる。
スタッフ達は、串に野菜や肉を刺して、バーベキューの準備に取り掛かった。ちなみに肉は勿論 牛で、見慣れた形のものである。
「逢坂壮五、かっこよかったね」
『龍も格好良かったですよ』
「え、いや…そうかな?結局何も出来なかったけど、なんだか照れるなぁ」
人差し指で頬をかく龍之介。
私と天は、無言で楽を見つめた。
「…なんだよ、言いたい事あるなら言えよ」
「『べつに』」
「言えよ!ダサいって言えよ!!」
楽を責める気など、さらさらなかった。私だって、というかほとんどの人がそうだと思うが、あの場で包丁を手に出来る気はしない。
一体どれくらいの人間が あの状況で、よし!やってやろう。という気になれるだろうか。
まさしく、龍之介と壮五が異質だと思う。
そんなふうに納得した時、近くで話すMEZZO"の声が聞こえてきた。
「うぅ、良かった…!ブッヒーがそーちゃんに殺されなくて、本当に良かった!」
「環くん…でもね。仮にいま助かったとしても、いずれブッヒーは誰かに殺されて食べられちゃうんだよ?それが、あの子の運命なんだ」
「…………ぐす」
痛々しい会話に、思わず耳を塞ぎたくなったのは私だけではないはずだ。
「逢坂、もしかして四葉に何か恨みであるのか?」
「さぁ。彼のせいで溜まった日頃のストレス、ここぞとばかりに解消してるんじゃない?」
「壮五くん…。今度ゆっくり話を聞いてあげよう」
『いや。善意の上で、厳しい現実を四葉さんに教えてあげているのでは?』
真相は、誰にも分からない。