第39章 組み紐をひいたのは
「あの、九条さん。質問よろしいでしょうか」
「なに?」
「素人である僕達が、生きた豚を捌くというのは少し無理がある気がするんですが…。知識も経験もありませんし」
「それなら心配いらないよ」
天は、豚の縄を持つ男性を紹介した。
「その道のプロの方にお越し頂いています。山田養豚場より足を運んでもらいました、山田さんです」
「え、あ、どうもはじめまして、逢坂と申します」
「ちょっとそーちゃん!!呑気に握手してる場合じゃねえからな!」
山田さんと握手交わす壮五に対し、発狂レベルで声を張り上げる環だった。
「そういうわけで。山田さんの指示の元、事を行なってもらえれば心配はいりません」
「そうですか!それなら、安心ですね」ほ
「いやいや!なにも安心じゃねえよ!!なんっで あんたはそんなに落ち着いてんだよ!こええよ!!」
胸を撫で下ろす壮五。もはや半泣きの環。その隣では、TRIGGERの2人が固まっていた。
「や、やべぇ、MEZZO" の、逢坂壮五まじでやべえ…っ」
「俺も、島で鶏が絞められるのは見た事があるから、鳥くらいならなんとかなるかもしれないけど…さすがに豚は自信ないな…」
「鳥ぐらいならなんとかする気でいる龍も普通に怖いな」
豚は、つぶらな瞳でメンバーを見上げている。体長はさほど大きくはない。まだ可愛らしさすら残るその豚に、壮五は包丁を持って にじり寄る。
「そ、そーちゃん!まじでやめよ!?俺、お肉我慢するから!トーモロコシだけで我慢出来るから!
だから、ブッヒーは殺さないで!」
「環くん…」
「うぅ…っ。そーちゃん…」
「名前を付けちゃ駄目だよ?愛着が湧くだろう?」
「ヤル気じゃん!まじでヤル気じゃん!!」
環はついに、豚を抱き締めて泣き出した。