第5章 さぁ、何をお作りしましょうか?
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私は店の中にある、地下階段を降りて行く。少し後ろには楽がついてくる。
そして、行き止まりのその扉の鍵穴に マスターから借りた鍵を差し込み扉を開ける。
「…ここに入るのは、2年ぶりだ」
そこは、割と広い地下空間が広がっている。キャパシティ150人のライブハウス。
小さなバーの地下に、この大きさのライブハウスがあるなんて。外観からは絶対に分からない。
しかし、ここが… 私の原点。
そう。ここは、Lio がライブを行った場所である。
あの時の私は、ここがスタート地点になると思って疑わなかった。
それがまさか、ゴールになってしまうなんて考えもしていなかった。
夢と希望に溢れ、ただ前だけを見ていた あの…懐かしい日々。
ここに来ると、その気持ちが蘇る。
『…2年前、私も ここにいたんですよ』
2年前、私は あのステージに立っていた。
「!!じゃあアンタも、Lioのステージを見たのか!?」
『はい。ここで、彼女の歌を…聞きました』
私は歌を…あのステージで歌っていた。
「…まじかよ。アイツの…Lio の歌を聞いたっていうなら、お前になら分かったはずだろ。
Lio は…本物だって!
それなのに なんで…アイツの事を悪く言った」
懐かしそうにステージを眺めていた楽だったが。今はこちらに体を向けて 怒気を含んだ声を私に投げる。
『悔しかった、から。ですかね』
私は、ステージに目を向けたまま。ぽつりぽつりと、言葉を落とす。