第39章 組み紐をひいたのは
ガヤガヤと、スタッフ達が慌ただしく準備を始める。炭やトング、調理器具などが並び、いよいよバーベキューらしくなっていく。
そして、天はスタッフと次の進行の確認中。
紡の元にはMEZZO"の2人が集い、話をしている。すると私の元には、楽と龍之介がやって来た。
そして第一声、楽は低く言う。
「トラブルか?」
『いえ。特には、何も』
「春人くん…」
龍之介は困ったような表情を浮かべ、私の首元に手を伸ばした。それから優しい手付きで、乱れた襟を正してくれる。
そういえば、さきほど荒々しく胸倉を掴まれたのだった。私は自分で直していなかったので、その辺りが皺になっていたのだろう。
「本当に危ない事はなかった?こんなところが乱れるなんて、よっぽどじゃないか?変な人に絡まれたんじゃない?」
『ありがとうございます。でも、本当にもう大丈夫ですよ』
「変な奴…そういえば、さっきあっちのコテージから男が来てたか?」
「そうそう。でもここからじゃ、あまり見えなかったんだよね。
春人くん…まさか、喧嘩なんてしてないよな?」
襟をピッと引っ張って、見下ろしてくる龍之介の笑顔が恐ろしい。私の事を心配して確認してくれているのは重々分かるが、彼は少し過保護が過ぎる気があるのだ。
『私は、この上なく平和主義者ですよ?丁重にお帰りいただきました。はい』
「へぇー…そっかー…。でもおかしいなぁ?それが本当なら、何でこんなにも俺達は目が合わないんだろうね?春人くん?」
「龍の圧が凄いからだと思うぞ」
私は龍之介の視線から逃げるように、顔を大きく横に背けていた。
『それより!そろそろスタンバイじゃないですか?頑張って下さいよ?
冠番組と言えど、ヤラセは一切ないですから。MEZZO"をキッチリ、実力で負かして下さいね。
出されるお題は、私も構成作家と一緒に考えたんです。貴方達がどのようにこなしてくれるのか、楽しみに見ていますから』
「あんたが考えたお題か。任しとけ!やるからには全部勝つ!」
「楽の言う通り!俺も頑張るね。春人くん」