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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第38章 待っててくれますか?




「良い話を聞かせてくれてありがとう。久し振りに、おじさんの心が踊ってしまったよ」

「そんなに大した話では、ないですけど」

「これからも、大切にしなさい」

「はい。自分でも、小まめにメンテナンスするようには」

「いや、そのヘッドフォンもそうだけど。
彼女を想っていた時の気持ちと、子供だった時の恥ずかしい気持ちも。全部認めてあげて、これからも大切に 胸にしまっておけるといいね」

「……はい。ありがとうございます」


ズルズル、ズルズル。そうやって、彼女への想いを引きずっていれば、いつか磨り減って 無くなってしまえば良いのに。
そう考えてた時期もあった。

それくらい、彼女の消失は俺の中で大きかったのだ。

どうしてだ。どうして 俺の前から居なくなるくせに、目に見える物をわざわざ置いていったりしたのかと。最初は意味が分からなかった。残酷だとさえ思っていた。


でも、彼女の友達の言葉を聞いて やっと分かったんだ。エリが、俺へ伝えたかったメッセージ。

“ 私には、これはもう必要ないから ”

この言葉と共に、彼女は姿を消した。


このヘッドフォンは、彼女と世界を遮断する為に使われていた。直接そう聞いた訳ではないけど、俺は気付いていた。
エリが、この下らない世界を拒絶していたこと。

でも、これを手放したという事は、彼女は変わったのだろう。下らないと思っていた世界に意味を見出し、人と関わりを持つ大切さを知った。


君がそれに気付けたのは、俺と出逢ったから。

もしも、そうだったなら…俺は嬉しい。
凄く、嬉しい。


いま。俺の知らない遠いどこかで、拒絶する事をやめた この世界のどこかで…エリは、大切な友人や仲間と 出会っているのだろうか。自分がいるべき場所を、見つけられたのだろうか。

それを 俺が知る術は もう、ないのだけれど。

もしも、そうだったなら…俺はもっと嬉しい。

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