第38章 待っててくれますか?
「まさかエリちゃんが、そんな悲しい恋をしてたなんて知らなかったよ。辛かったね」
『私がまだその人と、付き合ってた方が良かった?』
「滅相もございません!」オレもチャンス欲しい
『はは』
「ただ、思っただけ。今のエリちゃんが優しい良い子なのは、辛い思いをいっぱいしてきたからなんだなぁって」
それは違う。本当に悲しい想いをしたのは万理の方だ。私はただ、自分のワガママを押し通しただけ。そんな私に振り回された万理は、なんて可哀想なのだろう…
「あと、色々と協力してくれた お友達!彼も良い子だねぇ」
『うん。それは間違いない』
「元彼くんは、エリちゃんが引っ越した後、学校に来たのかな?絶対に会いに来てくれたよね。
ちゃんと、受け取れたのかな。エリちゃんがお友達に託した、元彼くんへの “ 例のブツ ” は」
『あはは。例のブツって言い方!なんだか悪い物みたい。
うん。来て、くれたんだって。私が転校した 次の日に。それで、ちゃんと渡せたよ って連絡くれた』
「次の日って!うーん…なんとも言えないタイミングだよね。
でも良かった。ちゃんと、受け取ってもらえたんだ」
万理が私のいた学校に姿を現したのは、私が転校した次の日だったらしい。
それと、友達には 固く口止めをしておいた。私が万理に、アイドルになるまで待っていて欲しいと願ったこと。
しぶしぶではあったが、彼は了承してくれたのだった。
「…エリちゃんは後悔してないの?夢が叶うまで待ってって欲しいって、言えなかったこと」
『悔いが残るのが、初恋でしょ』
「じゃあさ、もし…もしもだよ!?
今、その人と再会出来たとしたら…何て言う?」
難しい質問だ。
私は、万理を これでもかと傷付けた。もしかすると、未だに心に傷を負ったまま生きているかもしれない。そうでなければ良いのにと、今でも考える事がある。
私の事など、綺麗さっぱり忘れてくれていたら良い。新しい恋に、踏み出してくれてたら良い。
でももし未だ 彼の心の中に、私が住んでいるのならば…どうか…
『私のことを、忘れて下さい』