第38章 待っててくれますか?
やはり、彼に相談して良かった。
万理の言う通り、自分が困った時に助け合える仲間は必要だ。
そんな大切な事を私に教えてくれた万理には、本当に感謝している。今すぐにでもお礼を言いたい。
そして、話をしたい。
彼は、分かってくれるだろうか。身勝手な私のお願いを、聞き入れてくれるだろうか。傷付くだろうか?怒るだろうか?それとも…待っていてくれるだろうか。
「エリ…」
『え…』
私の名を呼んだのは、万理だった。どうして彼がここにいるのだろうか。早く話をしたいと思うあまり、私が作り出した幻覚なのでは?
しかし、腕を強く掴まれた痛みで 実際にここにいるのだと思い知った。
『っ、痛』
「行こう。エリ」
さらに強く腕を引かれ、強引に店の外へ連れて行かれる。それを見ていた友達が、急いで私達の後を追って来た。
「待って 大神さん!僕達は、少し話をしていただけなんだ。エリが悩んでたみたいだったから、相談に乗っていただけで」
「たとえそれが真実だとしても。俺が聞きたいのは、あんたの口からじゃない」
『……万、理』
初めて、万理が怖いと思った。いつもは優しい目が、今はキツく相手を睨みつけている。
その恐ろしい目が、この後自分にも向けられるのだと思うと、体が震えた。
しかし、これ以上 友達を巻き込む訳にはいかない。そう思った私は、早口で彼に別れを告げる。
『話、聞いてくれてありがとう。また明日学校でね。ばいばい』
「!っ、待っ」
こちらへ手を伸ばしてくれた彼をその場に置き去りにし、私と万理は歩き出した。
相変わらず強く引かれる腕が痛むが、何も言わずに付いてゆく。そんな私を嘲笑うかのように、空からは雨が降りて来た。