第38章 待っててくれますか?
友達から、恋人になったとしても。私達は何も変わらないと思っていた。しかし私は、初めての恋愛に戸惑うばかりだった。
『じゃあ…えっと、ファミレス』
「よし!じゃあ行こう」
万理は、こんなにもいつも通りなのに。私だけが、置いてけぼりみたいだ。
本当に万理は、私の事が好きなのだろうか。
「…エリ。あのさ…」
『な、なに?』
「手、繋いでもいい かな」
『え…。なん、で?』
「何でって!そんなの…決まってる。俺はエリが好きなんだ。少しでも近くに行きたい、触りたいって思うのは…自然な事だろう?」
まただ。また、胸がギュンってなる。こんな状態で万理に触れたら、私は爆発してしまうかもしれない。
でも…私も、彼が好きだ。好きな人には 触りたいと思うのは、自然な事。
万理が言った言葉の全部に、同意出来る。
頷いたら、万理は私の手を取った。
彼の長い指が、私の指と指の間に入り込んで来る。こんなふうに、誰かと手を繋いだのは初めてで。
どれくらい力を込めれば良いのか、どれくらい相手と距離を取って歩けば良いのか、何も分からない。
「どうしよう」
『…何が?』
「幸せ過ぎるんだけど」
『万理…』
「今まで知らなかった。誰かと手を繋ぐのが、こんなに幸せなんだって。
エリが隣でいるだけで幸せだと思ってたのに、手を繋いだら もっと幸せになった。
はは。なんか俺、幸せ過ぎて ちょっと怖い!」
『……うん。そうだね、私も』
幸せ過ぎて、怖い。
私達は、初めて手を繋いだ。それは、私が万理の彼女になって 1ヶ月が経った頃だった。