第38章 待っててくれますか?
私なりに、以前よりはクラスにも打ち解ける努力をしていた。しかし、さっきの彼女とは友達と言えるような間柄ではない。ほとんど会話もした事がないのだ。
そんな彼女がどうしてわざわざ、遠くを歩く私に挨拶をしに来たのか。理由は明白だ。それは、万理が隣にいたから。
おそらく、彼と少しでも会話がしたくて私を利用したのだろう。さっきの彼女の目を見れば分かる。
そんな簡単な事にも、この鈍感男は気付いていない。
「良かった。エリに友達が出来たみたいで。嬉しいよ」
『………』
「エリ?」
優しい万理の事だ。私の顔を立てる為に、友達に愛想良く振舞ってくれたのだろう。
分かってる。全ては、私を思っての行動だという事は。分かっているのに…
この、モヤモヤは何だ。
万理を見つめる同級生の熱っぽい視線。万理が彼女に向ける笑顔。それを見て、イライラしてしまう自分は…一体どうした。
「大丈夫か?どこか、調子悪い?」
『…ごめん。大丈夫』
こんな汚い感情、万理には絶対に知られたくない。私は頭を振って、初めての感情をなかったことにした。
『さぁ!今日は何する?カラオケ?ファミレス?それとも楽器屋行く?万理は何がしたい?』
「俺は、何でも良いよ。エリが行きたいところに行きたい」
隣から、万理に笑いかけられるだけで。心臓を針で刺されたような痛みに襲われた。
私はいつから、こんなふうに彼を見ていたのだろう。
友達だった時と、一体何が変わった?少し前までは、普通に話せていたのに。あんなに楽しい時間ばかりだったのに。
今はただ、胸が苦しい。