第38章 待っててくれますか?
あの文化祭は、本当に色々あった。
一緒に出店を回って、美味しい物たくさん食べたり。せっかくの万理のステージが残念な結果に終わったり。
そして、極め付けは…
私を疎ましく思ってる同級生と万理の、会話を聞いてしまったのだ。
万理は、彼女に同意した。私が変な奴だと。寂しい奴だという言葉に同意したのだ。
しかし、それは誤解だったと後で聞いて分かった。この会話には続きがあり、万理は彼女にしっかりとカウンターをお見舞いしてくれたらしい。
そして…そのすぐ後だ。
彼からの、告白を受けるのは。
絶対に見つかるはずがないと思って逃げた屋上に、彼は来た。
そして、花火を背負った万理が言った。
“ 好きだよ。どうか俺の、恋人になってくれませんか ”
笑っているような、泣いているような、何かを諦めているような。色々な色を孕んだ彼の表情。
私はきっと、一生 忘れることはないだろう。
しかし、何をどう伝えれば良いのか分からなかった。胸の中が、ぐちゃぐちゃで。
自分の気持ちなのに、上手く説明出来ない。
万理を好きだと思う気持ちは、たしかにここにある。しかしそれが、友情なのか愛情なのか。どうやって判断すれば良いのか分からない。
だがしかし、彼は真ん中に立っている。境界線の真上に立っている。今までは、友情という敷地の中に佇んでいた彼が。いつのまにか、愛情という敷地に、足を踏み入れていたのだ。
それを自覚した時、私は万理の問い掛けに頷いた。
“ エリ、俺の事が…好き? ”
「ヤバイヤバイ、ヤバイって!」
『百。語彙力が全部どっか行ってる』
「そりゃ行くよ!!こんな話聞いちゃったら!」
『そうかな。ここまでは、至って普通の高校生恋愛だと思うけど』
「…ここまでは、って事は。ここから先は、あんまり普通じゃなくなるのかな。
それってやっぱり…」
『うん。別れ方がね、最低だった。全部、私のせいなんだ』