第38章 待っててくれますか?
「ねぇエリちゃん。聞いてもいいかな」
『うん?』
サラダを取り分けながら、百は言った。私は皿を受け取りながら首を傾げる。
「さっきさ、オレに言ってくれたじゃない?
1番とか2番とか、優劣をつけられないものって絶対にある。どちらも同じくらい大切で選べないって事もあるよーって」
『うん。言ったね』
「なんかこう、凄く実感こもってたっていうか…。そう言ってた時のエリちゃんの、遠い目が気になってさ」
『遠い目…してた?』
「してたしてた!それで、オレ思っちゃったんだ。
エリちゃんも、優劣が付けられない程大切な物2つの間で、ゆらゆらしちゃったりなんか してた時があったのかなぁ!なんて…」
聞いても良いのかどうか窺うように、上目遣いでこちらを見る百。
彼に、こんなふうに気を遣わせてしまうくらい、先程の私は暗い顔をしていたのだろうか。百は、遠い目をしていた。そう形容しているが…
『百は凄いね。私の事、よく分かってる』
「ってことは、やっぱり経験談だったんだね!ねぇ、オレその話聞きたい。聞いても、良い?」
『人の恋愛話なんか、聞いても面白くなくない?』
「ええ!?恋愛絡むの!?恋バナなの!?それは予想外!モモちゃんは恋バナ大好物ですぞ!だから、むしろめちゃくちゃ聞きたい!俄然興味あるんだけど!」
机の上に身を乗り出す百。まさかここまで食い付いてくるとは思わなかったので面食らう。
「んーーーでも、エリちゃんにとって辛い思い出なら、無理には聞かないよ?キミの悲しい顔は、みたくないからさ」
『辛くは、ないよ。ただちょっと…
若かった頃の自分を思い出して、腹が立つだけ』