第38章 待っててくれますか?
「今ね、ユキが… 元 相方さんに…会ってるんだよね」
『えっと。相方って…、漫才か何かの?』
「違うよ!!オレとユキはアイドルで、お笑い芸人じゃないんだから!漫才はオレ達の趣味でやってるだけだからね!?」
『漫才をやってるって自覚はやっぱりあるんだね…』
百は、何も知らない私に 少しずつ話して聞かせてくれた。Re:valeが、今の形になる前の話だ。
「ユキさんは、オレと組む前は 違う人と、音楽をやってたんだ。それが、本物のRe:vale。オレは、その人の後釜ってわけ」
千のことを “ ユキさん ” と呼ぶ百は、少し悲しげだった。
それにしても、Re:valeにそんな過去があったなんて全く知らなかった。これは、有名な話なのだろうか?
「あ、でも、オレはその人の事が大大大好きだし、ユキと2人で会うのだって全然問題ないと思ってる!でもなんか、ちょっとだけ、ドキドキするんだ。その人とユキが、並んでるのを見たら。
ユキは、絶対にないって言ってくれてるけど、もしかしたら…
オレを置いて、その人のところに行っちゃうんじゃないかって」
『…百は可愛いなぁ』
「えええー!?ちょっとヤダ!やめてよなんかそれ恥ずかしい!」
微笑ましい目で見つめると、百はまるで乙女のように 両頬に手を添えて頬を染めた。
『百は千に、モモが1番だよ。って、言って欲しいんだよね』
「ぅ……。狡いよ、エリちゃんは。自分の事はからっきしな癖に、人の事になると、こうも鋭いんだもんなぁ」
『残念だけどね百。1番とか2番とか、優劣をつけられないものって絶対にあるよ。どちらも同じくらい大切で、選べないって事もある。多分だけど、千にとっては 百とその人が、そうなんじゃないかな』
「うん…。きっと、そうなんだろうね」