第37章 どうか俺の
夜空を照らす花火が、彼女の顔も一緒に照らした。
驚いたような、悲しいような、喜んでいるような。色々な感情を孕んだ君の表情。
俺はきっと、一生 忘れる事はないだろう。
「…突然、こんな事を言ったら。
エリは驚くかもしれないけど。でも本当は全然、突然なんかじゃないんだ。
きっと俺は…君を初めて見た時から、エリに恋をしてた」
俺が笑ってそう言うと、彼女の瞳は大きく揺れた。
花火なんかよりも、その綺麗な瞳をずっと見つめていたい。
「エリにとったら、俺のこんな気持ちなんて 迷惑でしかないか?」
『………』
「言っていいんだよ。俺にも。
彼氏なんていらない。それに、友達にも戻れないって」
『…から、…いの』
「え?」
『分からないの!』
エリは、苦しげに顔を歪めた。
花火の音がうるさくて、彼女の声を気持ちを聞き逃してしまうかもしれない。そう思い俺は、急ぎエリに駆け寄った。
『今までは…誰に、一目惚れだとか、付き合って欲しいとか言われても 別に何とも思わなかったのに!
万理に…好きだって言ってもらった瞬間、私の心臓が ぎゅってなったの!』
「!!
エリ…それって」
『あと、万理が もう私の傍からいなくなっちゃうかもって考えたら、今度は心臓が痛い…。痛くて、痛くて…!息が、出来ない…』
目をきつく閉じて、胸を押さえる彼女の顔は…
たしかに、恋をしている人のものだった。
「抱き締めても、良い?」
『……うん』
生まれたばかりの感情に、戸惑う彼女を そっと抱き寄せた。
「エリ、俺の事が…好き?」
『……うん』
火薬の香りを、涼やかな風が運んで来る。立ち入り禁止の屋上で、初めて出来た恋人を抱き締めた。
そんな 17歳、秋。