第37章 どうか俺の
階段を2段飛ばして駆け上がる。するとすぐに、屋上へと繋がる扉の前に到達した。
普段は、細い鎖でぐるぐる巻きにされ、施錠されているはずなのに。その鎖は地面でトグロを巻いていた。
そして両開きのその扉は、うっすらと向こうの景色を覗かせている。
ゆっくりと押し開けると、そこには…
グラウンドを見下ろす、エリの姿があった。
「屋上、立ち入り禁止なんだぞ?」
『……中途半端な施錠しかしてない、学校が悪い』
こちらを振り向く事なく、彼女は言った。両手とも金網のフェンスを掴んで、キャンプファイアーの火を見下げている。
「…なぁエリ、もしかしてなんだけど。さっきの話」
『万理はさ、私が可哀想だったから。友達になってくれたんだね』
「あぁ…やっぱり、聞いてたか」
『心の中では、私の事を 変な奴だと思って笑ってたの?それとも同情してた?』
「聞いてくれ。俺は」
歩み寄ろうとする俺を制止するように、彼女は叫んだ。
『来ないで!万理なんて大嫌い!
私、信じてたのに…。万理だけは、私の友達だって。信じてた…。でも、やっぱり違った!
もうやめる!万理と友達でいるのなんて、もうやめるから!』
金網を背にして、エリは叫んだ。
結局、俺は…何を必死になって守っていたのだろうか。
彼女が望むのなら、友達でいようと腹を括った。
彼女が笑っていられるのなら、自分の気持ちを殺しても良いと思った。
それなのに、今のこの状況は何だ?
俺の不注意が原因で、エリにこんな辛そうな顔をさせている。
『来ないで…。こっちに、来ないでよ』
「うん。無理だ」
もう、やめよう。
友達として エリを見守るのは。
もっと近くで、彼女の笑顔を守りたい。