第37章 どうか俺の
自分達の間違いに気付き、わざわざ謝ってくれた。それだけで、俺にとっては十分過ぎるほど嬉しい出来事だった。
ただ今は、タイミングが悪い。
「い、いえ!気にしないで下さい。俺も、本当に気にして無いんで。それより今は、ちょっと急いでて…」
「万理〜!お前、いい奴だなぁ!イケメンなのに!」
「本当だよ!心広いぜ…!イケメンなのに!」
彼らは、イケメンに何か嫌な思い出でもあるのだろうか。
「イケメンだけど、僕は万理が大好きだよ!
それだけ優しくて格好良かったら、そりゃあんな可愛い彼女出来るよなぁ…羨ましい…」
「そうだそうだ、万理。お前から、彼女にも謝っといてくれな」
「そういえば、お前の彼女は 何であんな所に1人でいたんだ?」
「先輩!エリを見たんですか!?」
急に目の色を変えて 掴みかかってくる俺に、彼は面食らったようだった。しかし、すぐに欲しい答えをくれる。
「あ、あぁ。俺達、さっき音楽室に楽器置きに行ったんだよ。そしたら、立ち入り禁止の屋上に続く階段を上がっていく彼女を見たんだよなー」
「ありがとうございます!」
俺は、最上階へと続く階段を目指して走り出した。
「万理ー!また一緒にやろうなー!」
「俺達、もっと上手くなるから!」
「愛してるぞー!イケメンだけどー!」
俺は、元気に叫ぶ先輩達に 大きく手を上げ答えた。しかし、体はもう真っ直ぐ前を向いて走り出している。
エリ。やっぱり俺は、間違っていなかったみたいだ。
困った時、自分1人の力じゃどうしようもない時。助けてくれるのは、やっぱり大切な仲間だ。
そんな大事な仲間の力を借りて、もうすぐエリを 迎えに行くよ。