第37章 どうか俺の
「やっぱりアイツ変ですよ!このまま近くにいたら、きっとあなたが傷付く事になります。それが私、心配で…」
「うーん…まぁ、たしかに彼女は変わってるところはあるよ」
「そうなんですよ!それに、友達だって一人もいないし!」
「うんうん。たしかに。近くで見ていて、腹が立ってくる事さえあるよ」
「ですよね!わぁ、話分かる!そうなんですよ!ほんと寂しい奴ですよね」
彼女は、どうしてわざわざ俺にこんな事を話しに来たのだろうか。女の子という生き物は、本当に何を考えているのか分からない。
そんな事を、なんとなく考えていた。だから、重大な事に気が付けなかったのだ。
実は、この会話をエリに聞かれていたなど。俺は知る由もなかった。
さらに言えば、これ以上聞いていられなくなった彼女は、ここまでの話だけを聞いて この場を離れていたのだった。
まさか、最悪な部分だけを聞かれているとは知らない俺は、会話を続ける。
「私も、アイツ見てたら本当に腹が立つんですよ!いつも周りを見下して、澄ました顔して、人の男とって!ほんと最低な」
「ほんとに…腹が立って、もどかしいよ。
こんなふうに、つまらない妬み嫉みを愚痴る事で 自分を安心させてるような人間に、彼女は真っ向からぶつかってるんだもんなぁ」
「え?」
「俺なら、そんな人は適当にあしらって距離取って、相手になんかしないのに。
まぁそこまでしろとは言わないけど、彼女も もっと器用に出来ないのかなぁって」はぁ
「ひ、ひど」
俺の本心を聞いた彼女は、見る見るうちに顔を青くした。しかし別に、泣かれようが喚かれようが 俺は全く気にならない。
他人に何を言われようと、俺の心は 変わらないのだ。
「でも。あんなふうに不器用で、直向きに努力出来る、心の綺麗な彼女が…俺は ——」