第5章 さぁ、何をお作りしましょうか?
呼び出しコールが鳴り続ける。8回…9回。10回たっても相手が出る気配はない。しかし私は根気よく 相手が電話に出てくれるのを待ち続けた。
やがて、プツ と音がして回線が繋がる。
『良かった…出てくれて。ありがとうございます。
それで…あの、今からそっちへ行っても良いですか?
…はい。えぇ。迷惑なのは…重々承知しているんですけどね…。
え?なんですか、それ…私の事分かってるくせに。私は本当にもう、貴方じゃなきゃ駄目なんですよ。他じゃ無理なんです。
長いはしません。少しだけ…ほんの少しでもいいんです。
仕事の邪魔はしません、30分もしたら帰りますから…。
!!ありがとうございます!良かった…今夜はどうしてもって思ってたんで。今からすぐに伺います!』
電話を切った私は、手早く荷物をまとめて退社の準備を整える。
しかし…。社内電話から高らかに響く外線のコール音。
『………』
どうやら会社は、まだ私を帰したくないらしい。
仕方なく私は受話器を持ち上げる。あぁ、心なしかいつもよりも受話器が重い。
『はい。お電話ありがとうございます!八乙女プロダクションでございます』
バァン!!
「うわ!びっくりした!どうしたんだ 楽!」
「ノックも忘れるぐらい話し合いは盛り上がったの?」
「アイツ………」
「「??」」
「人の女にケチつけといて、自分は女に電話かけてたぞ!」
「ちょっと待って!全く意味が分からないよ!楽ちょっと落ち着いて。春人くんと話をする為に、彼の部屋まで行ったんだろう?」
「とりあえず Lio は全くもってキミの女じゃないけどね」