第37章 どうか俺の
『貴方達……』
「わわ!ちょ、待ってエリ!」
『…すごーーく、カッコよかったですっ!』
「だから!ちょっと落ち着い…てるな」あれ?
満面の笑顔に変わり、エリは3人に賞賛の言葉を投げ掛けた。
もしかして、彼女もさっきの演奏が失敗した事には 気付いてない?
「そ、そう?はは、君みたいな子にそう言われると照れるな」
「ねぇねぇ、もしかして僕達のファンになっちゃったりした?」
「じゃあさ!連絡先、交換しない?!」
『いえ!私は、大神万理君のファンなので、連絡先は結構です。
ほら早く行こう万理!』
「え、あ、あぁ」
彼女は さっさと退散しようと、俺の腕を引いた。
先輩達に頭を下げてから、俺達は舞台裏を飛び出した。
「……エリ」
『………』
俺の呼び掛けには答えぬまま、彼女は俺の腕を引いてずんずん前へと進む。
「ねぇ。エリ」
グラウンドを抜けた後も、彼女は足を止めなかった。
「お願い。顔見せて、エリ」
そう言ったら、彼女はピタリと足を止めた。
キャンプファイヤーの準備が着々と進められ、点火を今か今かと待っている人達の喧騒。そんな声が遠くに聞こえる。
すると彼女は、ゆっくりと振り向いた。
『ねぇ万理。あの人達、耳が腐ってるんじゃない?』
「!!
ははっ、ははは!」
『笑ってる場合じゃないよ。良い耳鼻科、行った方がいいって!
さっきは、万理の手前 我慢したけど…私、怒ってる!』
「あはは、ありがとう、俺の為を思って我慢してくれたのか。っくく、いや、ほんと助かったよ。君の我慢のお陰で、俺の安寧な高校生活は約束された…っ」
『だから笑い過ぎだって!』
俺の予想した通りの言葉を彼女が言ったものだから、つい我慢出来ずに笑ってしまった。