第37章 どうか俺の
それなりに自分や周りを冷静に見れていると思っていたのだが。彼女から見れば、そうでもないらしい。
というか。正直言って、エリにだけは言われたくない。
絶対に彼女は、俺より客観視出来ていやしない。もし出来ているなら、しっかりと自分の魅力を理解して、セーブしているはずだ。それが出来ていないから、こうも立て続けに男に告白されているんだろう。
「…で?エリはどうしてアイドルを目指してるんだ?俺は答えたんだから、次はそっちの番だぞ」
『あぁうん。アイドル志望なのは、私が欲張りだから』
「欲張り?」
『そう。アイドルってね、歌唱力にダンス、それに容姿も表現力。全部ぜーんぶ見られて評価されるの。
見る人を魅了出来るポイントが、多ければ多いほどやり甲斐がある。
完璧なアイドルになる為には、その分 努力が必要だけど。努力すれば努力しただけ、認められた時 嬉しいでしょ?
皆んなが感動出来るような歌を歌えるようになる。
皆んなが驚くようなダンスを踊れるようになる。
皆んなが振り向くような容姿になる為に、化粧も勉強する。
皆んなが楽しめるようなステージにする為に、演出も勉強する。
皆んながつい口ずさみたくなるような歌を作る。
絵空事だって、笑う人もいるだろうけど。でも私は、いつかそうなれるように努力を重ねているところ』
「……ははっ。たしかにそれは、強欲だな。
でも、俺は信じてるよ。エリなら、そんなアイドルになれる。そしていつか、ステージの上から 世界中の人々を幸せにするんだ」
彼女の満面の笑顔が、夕日に照らされた。こんなにも魅力的に笑う事が出来る彼女だ。
もしかしたら、いつか伝説のアイドルと呼ばれる日が来るかもしれない。
それが現実なるとその時に、エリの隣で笑っていられる幸せ者は ぜひ俺がいい。