第37章 どうか俺の
俺は、店を出る彼を追いかけた。そして、謝罪の言葉を投げかける。
「あの…ごめん。俺が勝手に、君の気持ちをばらしてしまったから あんな事に…本当に、悪かった」
「いや、いいんだ。僕も、遅かれ早かれ告白しようと思ってたから。
正直に言うと、もう耐えられそうになっかったんだよね。彼女の事が好き過ぎて、胸が張り裂けそうだった。
大神君は凄いね。自分の気持ちを押し殺してでも、エリの隣にいる事を選んだんだろう?僕には真似出来ないや。
頑張って。僕は駄目だったけど、彼女が幸せになれるのなら。心から君の恋を応援出来るよ」
どう答えるのが、正解だったのだろう。結局、俺は何にも言えなかった。
どれだけ慎重に言葉を選んでも、どれだけ綺麗な言葉を並べても、今の彼の前では 全てが薄っぺらく聞こえてしまうような気がして。
自分が振られた訳ではないのに、こうも胸が痛いのはきっと。
俺は、自分の姿を彼に重ねているからなのだろう。
『どうして…簡単に、好きだなんて言うんだろう』
「簡単に、ではないと思うけどな。俺は。
邪魔した俺が言えた義理じゃないけど、彼は本気でエリが好きだったんだと思う」
『そうかな?でも、好きって言わなければ ずっと友達のまま、楽しく遊んでいられたのに。私には、よく分からない。男の子の気持ち…。
万理以外の男の子の気持ちが、分からないよ』
俺には、彼の気持ちが痛いくらいに分かるよ。
俺がもし、彼のように想いを告げたなら。君はやはり 俺を遠ざけるのだろう。
恋人にもなれない、友達にも戻れないというのなら。君に振られるであろう俺は、一体何者になるんだと言うのだろう。