第37章 どうか俺の
『万理が言った事が本当って…それは』
「僕は、エリが好きなんだ」
懸命に笑顔を作る彼を見て、俺は後悔した。
どうして、安易にそれを彼女に伝えてしまったのだろう。絶対に、俺が口を挟む問題ではなかったのに。
勝手にイライラして。勝手に妬きもちを焼いて。まるで八つ当たりのように、エリ達にぶつけてしまった。自分がいかに幼くて、子供なのかを思い知る。
『…私が好きだから、傍にいたの?私に好かれたい一心で、私が喜びそうな事を言ったの?』
「正直、それもあったのかもしれない。でも、」
『ごめん。私、今は誰かと付き合うとか 考えられない』
「……分かった。じゃあ、友達のままで」
『ごめん。貴方の気持ちを知ってしまった今は、友達と思えるかどうかは、分からない。努力は…してみるけど。本当に、ごめん』
彼は、悲しげな視線をエリに落としている。こうなってしまったのは、俺のせいだ。
俺が余計な事を口走らなければ、友達でいる権利を彼が失う事はなかった。
「いや…僕の方こそ、ごめんね。でも、これだけは聞いて欲しい。
エリの、アイドルを目指す姿勢に感銘を受けたのは本当だから。僕も、君みたいに努力していこうって気持ちになったのは、本当」
『…分かった。信じる。ありがとう』
「良かった。
えっと…じゃあ、僕はもう帰るね」
『うん…。ごめんね』
「いや。でも、出来れば明日 学校で会った時、無視とかはしないで欲しいな。僕はエリに、普通に おはようって声をかけるよ。
だから君も、おはようって。返して欲しい」
彼のささやかなお願いに、エリはこくんと頷いた。