第37章 どうか俺の
エリが席へと戻って来る。そして、3人での楽しい楽しい会話が始まった。
とっくに知っている、エリの思想や趣向。
全く知らなかった、エリの学校での様子。
どちらにしても、彼女を想う男の口から聞く話は 俺を苛立たせた。
さらに不快だったのが、エリと彼の距離だ。いちいち近い。隣に座っているせいかもしれないが、肩と肩が時折触れそうになっている。
彼女も、どうして気付かないのだ。
こんなにも彼の目は、君を好きだと言っているのに。
「ちょっと、お手洗いに行って来るね」
『うん。トイレはそこ、突き当たりを左だから』
彼は立ち上がって、エリの案内通りに歩いて行った。その背中を見送ってから、彼女はすぐさま俺に問い掛けた。
『万理、もしかして今日は調子悪い?あんまり話してないから…。大丈夫?』
「エリ」
心配顔を向けて来る彼女に、俺は どうしてこんなに酷い事を言おうとしているのだろう。
しかし、淀んだ心から溢れる言葉は止められない。
「彼は、友達なんかじゃないよ」
『……え?』
「エリの側にいたいから、君の喜びそうな事を言って近付いただけだと思う」
『なんで、そんな 事を言うの』
「なんで…?
エリこそ、なんで気が付かないんだ。彼は、君が好きなんだ」
『……違う。それは違うよ万理。だって、彼は私の友達だもん。好きとか、そういうのじゃ ない』
エリは、ふるふると首を横に振った。
「気付いてないのは…エリだけだよ。俺にはすぐに分かった」
『違う!やめてよ万理!そんな適当な事言わないで!』
「大神さんの言ってる事は、本当だよ」
言い争う俺達の隣には、いつのまに彼が立っていた。そして、申し訳なさそうに笑ってから、エリに告げる。