第37章 どうか俺の
淡い期待を抱いたまま、しかし何事もなく時間は過ぎた。あの幻想的な、プールでの一夜は夢だったのでは?と思えるくらいに。
俺たちの関係は相も変わらず、仲良しこよしのお友達。そして季節は移ろい、秋になっていた。
そんな人肌恋しい季節のある日、彼女は言った。
『万理!私ね、友達が出来たよ!』
「ほんとに?凄いじゃないか!」
『ありがとう!もうこれも万理のおかげ。話してみたら、凄く良い子だったの。
私を妬んだり羨んだりもしない。私を見てると、自分も努力しないとなって思うんだって。
だから約束したの。一緒に頑張って、一流の芸能人になろうねって』
「…な。言っただろう?エリなら、いつか本当の友達が出来るって」
勿論、嬉しい。彼女に友達が出来たのは嬉しい。これは本心だ。間違いない。
しかし、寂しいと感じる自分がいるのも自覚した。
これからきっと、エリにはどんどん友達が出来るのだろう。彼女の魅力に気付いた人間が、どんどん周りに集まるのだろう。今までは、俺だけだったのに。
エリに、友達が出来た宣言をされてから1週間ほど経ったある日。
突然こんなお願いをされた。
『ねぇ万理。私の友達に会ってくれない?ほら。この間 話した、新しく出来た友達なんだけど』
「それは別に構わないけど…どうして?」
『その子がね、万理に会いたいんだって。
私が万理の事を話したの。高校になって初めて出来た、大切な友達だって。そしたら、会ってみたいって言われて』
俺も エリの友達がどんな子なのか、気になっていた。だから、好都合だと思った。
彼女の良さを分かってくれるような子だ。きっと良い子なのだろう。
俺が快諾した翌日、3人でこのファミレスに集う事となった。