第37章 どうか俺の
「こりゃーーー!!お前らそんなところで!何をしとるかーー!!」
「『!!!』」
俺とエリは、揃って声の主の方へ顔を向けた。するとそこには、懐中電灯でこちらを照らす、警備員のような男の姿が。
こんなところから逃げ果せるのは不可能と踏んだ俺は、とにかく彼女をプールサイドへと運んだ。
水から上がった俺達は、当然のように2人揃って説教をくらう事となる。
「こんな時間に、学校に忍び込んで!しかも勝手にプールにまで入りおって!何を考えとるんじゃ!」
「『すみません…』」
「とにかく、親御さんに連絡するから待っとれ!」
まぁ、そうなるのが妥当だろう。しかし、俺はともかく彼女は情状酌量してもらえないだろうか。
通用しそうな作戦を企てている最中、エリが口を開いた。
『待って下さい!どうしても親に連絡するなら、私だけにしてくれませんか!』
「「!」」
『彼は、悪くないんです!
私が強引に、学校が見たい。プールに入りたいって頼み込んだんです。
彼の家は、凄く御両親が厳しいから…っ。うぅ…きっと、怒られてしまう、私のせいで、酷く怒られてしまう…!』
「お嬢さん!泣、泣くんじゃない。泣かれてもワシにはどうする事も出来んて!規則は規則で…!」
『うっ…く。実は、今日、私の誕生日なんです。プレゼントなんかいらないから、いつも彼が生活してる学校が見たいって。誕生日プレゼントは、それが良いって…!私が、無理に。だから、私が悪いんです…!ひっく、…』
「……」
エリの流す涙は、本物のように見えた。警備員も、彼女を前にしどろもどろだ。
やがて、根負けしたように呟いた。
「…お前さん達を見つけたのが、ワシで良かったな」
『おじさんっ!じゃあ…!』
「早く行きなさい。ワシからお嬢さんへの、誕生日プレゼントだ」キリ