第37章 どうか俺の
『学校…つまらないな。万理と2人でいる方が好き』
「またっ、そういう事を言う…!」
『??』
俺は、どっどっどっ と速鳴りする心臓部分を、服の上からぎゅっと掴む。
そんな様子を、エリは不思議そうに眺めていた。
『万理は、学校好き?』
「え?あぁ…まぁ好きだよ。俺はエリより、色々と上手くやってるからな」
『……この器用さんめ』
「エリも頑張ろう。絶対、将来役に立つから」
『うん。頑張る』
俺はバンドマンだけど、彼女はアイドルを目指している。向いてるベクトルは多少違うものの、エリの才能は感じ取らずにはいられなかった。
エリは将来、絶対に世を騒がせるアイドルになる。恵まれた才覚を持った者が、本気の努力をするのだ。
そんな彼女が夢を掴めない世の中など、全部うそだ。
ただ俺は、そんな彼女が歩む茨の道が ほんの少しでも平坦であれば良いと。そう思って、エリにアドバイスをしたのだった。
『私、見てみたい!』
「え…?」
まずい。考えをまとめている間に、彼女の言葉をいくつか聞き逃してしまったようだ。
『いいでしょ?万理!』
「あぁ…う、うん」
会話の流れに追い付けないまま、ついつい眩しい笑顔に負けて 首を縦に動かしてしまった。
たがまぁ別に問題ない。彼女が望むなら、俺は何だって叶えてあげるつもりだから。
「で、何を見たいって?」
『聞いてなかったのに返事したの?!』
「あはは。ごめんって。
それで?俺は君に、何を見せてあげれば良い?」
『万理の学校!!』