第36章 どうか俺と
中学の時は、たくさん友達もいて。孤児院で仲良くなった子もいた。しかし、高校に上がってからは変わったのだと。彼女はそう言った。
『プライドばっかり高くて、口を開けば愚痴や僻みの言葉ばっかり。そんな人達を見て、高校では友達なんていらないやって思ってたけど。
でもこうやって、誰かと話してるとやっぱり楽しい。
万理、ありがとう。私と友達になってくれて』
「…俺も、エリと友達になれて嬉しいと思ってるよ」
心底嬉しそうに笑う彼女には、とても言えなかった。
本当は今、胸が痛いこと。
エリは、もう満足なのだろう。今の関係のままで。
彼女の中では、俺とは友達のままでいるのが最適解。そこがゴール。
友達になれたのが嬉しいのは、俺だって同じだ。もし俺と彼女が出会い、こうして友達になっていなければ…
もしかすると、エリは完全に心を閉ざしてしまっていたかもしれない。友達など不必要だと、人との関わりを断つような人間になっていたかもしれない。
それを回避させたとしたなら、俺がこの世に生まれた意味はある。そう言ってしまうのは、大げさだろうか。
でも、本当にそう思うのだから仕方ない。
—— エリ。君の為ならば、俺はいくらでも 何にだって耐えられるよ。なかった事に出来るよ。だから
生まれかけていた この気持ちに、蓋をする。
成長しようとするこの芽を、摘んでしまおう。
大輪の花を、咲かせてしまう前に。