第36章 どうか俺と
やはり 違う制服を着た他校生が、正門の前に待ち構えているというのは かなり目立つらしい。
帰宅の為 門を通る生徒達が皆、1度は俺の方を振り返っていく。
加えて、俺は彼女の名前が分からない。呼んで来てもらう事も出来ないし、ここで待つしか方法はないのだが…
「まさか、黙って帰ってたりは…してないよな。さすがに」
もうかなり待ったのだが、彼女は一向に現れない。コンクリの壁に背中を預け、ぽつりと独り言を呟いた。
ちょうどそんな時だ。正門を通り抜けた男子生徒の声が耳に入る。
「あいつ、まだあの特待生の事諦めてなかったのかよ」
「はは。みたいだな。懲りずにまた追い掛け回してたぜ」
「よくやるよなぁ。あいつの彼女も、そこそこ可愛かったじゃん。ギャル系で」
「だよな。鞍替えしないで妥協しときゃ、勝ち組だっただろうに。どんなけ高望みするんだっつの」
特待生?という事は 成績優秀者を指しているのだろう。それに、ギャル系の女の子を振り、高望みして鞍替え?
嫌な予感が胸を過ぎった瞬間、俺は彼らの肩を叩いていた。
「すみません!それ見たのって、どこですか?」
『その件なら、断ったはずだけど』
「どうしても諦めきれないんだよ!君が好きで、どうしようもない。もっと真剣に考えて欲しい」
『もっと…真剣に?』
「あぁ。俺と付き合うこと」
『これが、真剣に考えた結果だって分からないの?
付き合っている人がいるのに、それを清算せず他の人に告白するような人を、私は絶対に選ばない』
「それは…彼女とはもう、きちんと話し合った!」
『彼女は何も納得してないみたいだったけど。
それに、ろくに話をした事がない私の 一体どこを好きになったの?見た目?まさか一目惚れとか言うんじゃないよね』
「そ、それは…」
『貴方の言葉と態度からは、何も伝わって来ない。お願いだから、もう私に関心を持たないで。迷惑なの』