第35章 いつのまにか、その種は芽吹いてた
それはもう、キラッキラと期待に満ち満ちた瞳で見つめられている。その目は明らかに、自分の名を言って貰いたいと物語っている。
やはり、楽のような人間でも グループ内の人気ランキングなどを気にしたりするのだろうか。少し意外だった。
だが。あまりに真剣な表情でこちらを見るものだから、私の中の意地悪心が疼いてしまう。
『TRIGGERの中ならやっぱり天才センターの、九条天…』
「!!
そ…そう、ですか」
ショックを隠しもしない楽の表情。私から目を離して俯いてしまった。
しかし私が “ じゃ、なくて ” と言葉を続けると、すぐ様パッと顔を上げた。
『十 龍之介かな?筋肉カッコいい!』
「!!
で、ですよね…龍の筋肉には、確かに敵わない…よな」
再び項垂れる楽。
どうして、私なんかの回答に ここまで大袈裟に反応するのだろう。そんな必死な楽が なんだか可愛く見えて、我慢出来ずに吹き出してしまう。
『ふ、ふふ!あっははは。いやもう、なんでそんな一生懸命なのか、分からない。あはは!ほんと おかし…
嘘!嘘ですよ!私、八乙女楽の大ファンですよ』
「……っ、」
ついに堪え切れずに笑い出してしまう。満面の笑みである私を前に、楽は固まってしまった。
『…あれ?あんまり嬉しくない、のかな』
「喜びがキャパをオーバーしたんだろ。しばらく放置したら動き出すって」