第35章 いつのまにか、その種は芽吹いてた
『どっちも同じくらい、格好良かった…なんて。きっとこんな答えは求められてないんですよね。
あえてどっちかに決めなくちゃいけないんだとしたら、やっぱり楽かな。
私、TRIGGERの大ファンなんで。多分、贔屓目も入っちゃってると思うんですけど』
「ま、あんたならそう答えるだろうなって予想はしてたけど、結構堪えるなこれ」
『いや、どっちかをあえて強引に選んだ結果だよ!?大和の演技も勿論凄かった!うん!なんなら、楽の片脚ぐらいは食っちゃってかも!!』
「なんか悪いけど、その褒められ方はあんまり嬉しくない!なんかグロい!」
今更ながら、大和を選ばなかった罪悪感に駆り立てられる。力無く笑う彼をフォローしたつもりなのだが、どうやら不発のようだ。
そして、意外にも楽の方はただ黙りこくっているだけだった。
「あんたとそっくりの八乙女楽が選ばれたってのに、嬉しくないのかよ」
「あ…いや、嬉しいに決まってる。けど、なんかもう嬉し過ぎて…反応に困ってた」
呆然としていた楽だったが、ぱっと目に力が戻る。そして、またしても私の手を取った。
「ありがとう。選んでくれて。八乙女楽も、きっと喜びますよ」
「『……』」
(なんじゃそりゃ)
もはや突っ込みどころが多くて、私と大和も苦笑いだった。
「エリさんは、TRIGGERのファンなんですね!3人の中なら、誰が1番好きですか?」
『え』
「あのさぁ八乙女、ちょっと調子乗り過ぎじゃねえの?」
「俺は八乙女楽に似たただの蕎麦屋だ。あんたは黙ってろ」ギラ
「おい!あんた実はもう隠す気ないだろ!」敬語はどこ行った!