第35章 いつのまにか、その種は芽吹いてた
なんとなく場の空気が重い気がする。少しでも軽くしたいなという思いから、私は口を開いた。
『そ、そういえば、大和と楽が共演したドラマ、ありましたよねー。医療系の奴。あれ、面白かったなぁーなんて…』
「!!
俺のドラマ…!じゃなかった。あのドラマ、見たんですか!?」
見たも見た。なんなら、テレビでではなくて収録現場でバッチリ生で見た。
『あはは。見ましたよ。評判も良かったみたいですね。深夜枠なのに平均視聴9.74%、最高視聴率なんて24.58%!もう お化けドラマの爆誕だ!って凄い盛り上がっ…』
「「………」」
2人が黙りこくって、私は失言に気が付いた。
馬鹿か私。いち視聴者がここまで詳しい情報を知り得ていたら気持ち悪いではないか。
「へぇ。エリさんはドラマ好きなんですね」
「……」いや何でもっと別のとこ突っ込まない?
『そ、そうなんですよー!色んなドラマを幅広く見てますからね!本当に!
それにしても、そのドラマは面白かったですよ』
「…どっちが良い演技してると思いました?」
『へ?』
「お、それは俺も気になるなぁ。
俺と八乙女楽。お前さんの目には、どっちがより良い俳優に映ったのか。ぜひ教えてもらいたいね」
何だろう。もしかしてこれは…
状況が悪化したか?
私を見つめる2人の視線が痛い。環に助けを求めようにも、幸せそうな顔で蕎麦を食べている邪魔は出来ない。
「八乙女楽の方が勝ってましたよね」
「いーや、あれは完全に俺が主役食ったでしょ」
さぁ、どっち!!
と。2人の俳優はギラついている。