第34章 いや、はい。もう何でもいいです
厨房に背を向けて座る私。対面には環。そして、環の隣には大和。4人テーブルにて、蕎麦を待つ。
さきほど楽が、昼の営業が終わった。と言っていたが、そのせいだろうか。本来ここで働いているはずのは母親も、スタッフの姿も、今は見当たらない。
私と大和がグラスに口を付け、唇を湿らせる。そんな時、環が何気なく言った。
「そういえば、2人ってセフレ?」
「『っぶ……!!』」
私と大和は、思わず水を噴き出してしまった。これが動揺せずに、どうしていられようか!
『な、ななな、なんで、』
「あーびっくりした。でもとりあえず、お口の周りを拭こうな。女の子でしょ」
私の口から垂れ流しになっていた水を、大和は丁寧に拭ってくれる。
確かに、女にあるまじき反応だが、これは仕方がないと思う。
「なぁタマ。セフレってどういう仲の事か分かってんの?」
「俺だって知ってんよ、そんくらい。そーちゃんが教えてくれた。
セフレってのは “ 友達以上で恋人未満 ” の男女の事だろ?それも、限りなく恋人に近い関係なんだって、そーちゃん言ってた」
『お…』(逢坂さん、ナイス〜〜!)
「ソ…」(ソウ、ナイス〜〜!)
「??」
私達は、環がセフレの意味を 正しく理解していないのを理解した!
「いや、まぁ 間違ってないっちゃ間違ってない…ような」
『でもタマちゃん?私と大和はセフレじゃないよー?恋人未満、セフレ未満、友達未満だよー?』
「おーい。それってただの顔見知りじゃないの?流石に傷付くぞ?なぁ」
「……そっかぁ、なんだよー違ったのか!そっか!へへ」
環は、にこにこと幸せそうだ。私と大和が、恋人に近いような関係でなかった事が よほど嬉しいらしかった。
しかしそんな彼が、返答に困る質問を投げかけてくる。
「じゃあさ!えりりんと俺は、セフレ?」
『あははっ。うん!セフレセフレ!』
「爽やかなセフレもいたもんだ」