第33章 とりあえず土下座から行かせていただきまーす!!
彼は、また胸に手を当てる。それはまるで、私と桜春樹との話を しっかりと心に落とし込んでいるかのように見える。
「ありがとうございました…。その話が聞けて、ワタシは今とてもHAPPYです。
もしよろしければ、ワタシが思うところを話しても?」
『はい。勿論』
「ハルキは おそらくですが、春人氏と出会った時にはもう、ゼロを探す旅の最中だったと ワタシ思います。
ですから、アナタがハルキの正体を言い当てたから、居なくなった。これは違う思いますよ」
『…そうだったんですね』
「YES。それと、ハルキはその桜の木の下で、たしかにアナタを待っていた。そう、思います」
『それは、何故でしょう』
「きっとハルキは、アナタの作る曲が 好きだったのでしょう。ワタシには、分かります」
何故か自信満々に、ナギは言い切った。それはまるで根拠の自信だったが、何故か私は 心が少し軽くなったような気がした。
『…そうでしょうか。でも、もし本当にそうだったら…嬉しいですね』
「ワタシは…ずっと、ハルキを探しています。ハルキ見つけるまで、ワタシは絶対に諦めない。
BUT 時には挫けそうになります。本当に見つけられるのか、不安にもなります。
そんな時…TRIGGERの曲の中に ハルキを見つけました。久しぶりに、ハルキを近くに感じる事が出来たのは 春人氏。アナタのおかげです。
THANKS . アナタのおかげで、ワタシ ハルキにとても久しぶり会えたような気持ちなれましたよ」
彼は、まるで桜の花びらのような、繊細な笑みを口元に浮かべた。
その笑顔は あまりに美しい。
彼のその微笑みと、今夜の月と、一体どちらが美しいのか。
ふとそんな疑問が浮かび、見比べて答えを出す為に 白銀色に輝く月を見上げた。