第33章 とりあえず土下座から行かせていただきまーす!!
ナギの表情が真剣なのを見て、三月は瞬きを数回した後に 頷いた。
2人きりになると、ナギは私を正面から見据え、そして胸に手を当て問う。
「…春人氏。アナタは、ハルキを知っていますか」
冬の、痛いくらいに澄んだ空気が、彼をより美しく見せている気がした。
『……』
ナギは、さきほど言った。
“ 出来る事なら、これを作った人と話がしたい ” と。
これ とは、JUMP!UP!の事。
つまり彼が話をしたい人物。それはすなわち、私を指す。
「ここ最近のTRIGGERの曲からは、僅かにハルキ、感じます。作曲者 H 。それは、アナタのことですね?」
『…そうです』
「ワタシに、教えて下さい!どうして、アナタの曲からハルキが見えるのか。もしかして、アナタはハルキと繋がっているのではないですか!?お願いです。もし彼を知っているなら、ワタシに全部、話して下さい…!」
綺麗なブルーの瞳が、大きく揺れる。
彼の気迫から、並々ならぬ事情を感じる。これは、はぐらかすのは得策ではないだろう。
私は彼と目を合わせて、口を開く。
『桜さん…桜春樹とは、昔 会った事があります。
そして、師弟…と呼べるほど大した関係ではないのですが、彼から作曲に関してほんの少し 指南を受けたんですよ。
だからもし貴方が、私の手掛けた曲から桜春樹を感じ取ったというのなら。きっとそのせいだと』
話している途中に、ガッと両肩口を強く掴まれる。
彼の取り乱した表情が、目の前に迫った。
「昔とは具体的にいつの話ですか!?ハルキと最後に会ったのは!?いま彼がどこにいるのか知っていますか!?」
彼の真剣な瞳の中には、驚いた顔の自分が映り込んでいた。