第33章 とりあえず土下座から行かせていただきまーす!!
社長と紡を事務所に残し、私とナギ、三月は外に出る。
すっかり高くなった月を見上げながら、三月は腰に手を当てて言う。
「さ、て。んじゃ帰るか!
えっと、TRIGGERのプロデューサー」
『春人でいいですよ』
「お、そうか?じゃあ遠慮なく呼ばせて貰うな!
春人。今回の事、本当にごめんな。あんたの曲、奪う結果になっちまって」
『気にしないで下さい。と、言うよりも。これは私達の過失です。
それに、今回の事がなければ “ GROW UP! ” はこの世に生まれなかった。
私は、感謝しているくらいですよ』
「OH!そうでした!オン大の、最優秀賞。おめでとうございます。悔しいですが、TRIGGERの新曲は、ワタシも痺れました」
「そうだったそうだった!あの曲も、あんたが作ったんだろ?いやぁ、凄いなぁ。TRIGGERも相変わらず、めちゃくちゃカッコ良かったし!」
もしここにTRIGGERの3人がいれば、ライバルからの祝福の言葉に、それは喜んだ事だろう。
帰ってから、しっかりと伝えよう。
「今から春人も寮に来ないか?飯食った?もしまだなら、うちで食ってけよ!何てったって、今日のメニューは皆んな大好き」
『カレーでしょう?』
「!!
大正解でーす!なんで分かりましたか?」
『事務所に来た時、和泉さんから僅かにスパイスの香りがしましたから。そうかな、と思いました』
「え、嘘。オレ、カレー臭い!?なんか恥ずかしいんだけど!!」
三月はまるで犬がするみたいに、フンフンと鼻を鳴らして 自分の体中を嗅いで確認している。
『せっかくのお言葉ありがたいのですが、今日は遠慮しておきます』
「そっか。分かった!じゃあまた食いに来いよ?いつでも歓迎するからさ!」
人懐こい笑顔を浮かべる三月。そんな彼は、隣に立つナギを見上げて言った。
「じゃあ帰るか!ナギ」
「…ミツキは先に帰っていて下さい。ワタシは、彼と話したい事あります」