第33章 とりあえず土下座から行かせていただきまーす!!
「それはありがたい申し出だね。素直に甘えさせてもらうとするよ」
「ですが “ JUMP!UP! ” は、既に作曲者を 桜春樹と公式発表しています。さすがに、このまま事実を公表しないのは まずい…ですよね」
『たしかにそうですね。もし桜さんが、どこかでこの曲を耳にした時。自分が作曲していないにも関わらず、作曲者が自分になっていたら、驚いてしまうでしょうから』
かと言って、馬鹿正直に “ H ” と公表してしまうのも考え物だ。
なぜなら、私は今までTRIGGERの為にしか曲を提供していない。そんなHが、突然ライバルであるIDOLiSH7に楽曲を提供したとなると…
世間が騒つくのは必至。
私がそれを伝えると 社長は、作詞作曲の該当欄を “ NO NAME ” とする。そう提案してくれた。
これならば 桜春樹との関係性もなくなるし、Hとの関連も無い為、ややこしい話にはならないだろう。
まぁ、どうしてもメディアからの突っ込みは多少受けるだろう。
一度、桜春樹の曲として発表してしまったのだ。それを今更 覆すとなると、ある程度の尋問には答えざるを得ない。
そこは、小鳥遊プロの手腕を信じるとしよう。なんとか上手くメディアの突っ込みを掻い潜ってくれると願って。
『こんな時間までお付き合いいただきまして、ありがとうございました』
「いやいや。こちらこそ。
それにしても、君のような人材を抱えている八乙女君が羨ましいよ。
会えて嬉しかった。これからも、ぜひうちの子達と仲良くしてあげてね」
私が腰を上げると、社長も同じように立ち上がって 右手を差し出した。
そして、なんとも柔らかい笑みを その顔を浮かべるのだった。