第33章 とりあえず土下座から行かせていただきまーす!!
私が話を進めるにつれ、三月の顔色は蒼白に近付いていった。そして、ついには手元からチョコレートがぽろりとこぼれ落ちる。
「え……え、嘘だ…嘘だよな、ナギ。頼むから、嘘って言ってくれよ!この曲は、桜春樹の物だって言ってくれ!」
「ですから、ワタシはそんな事は言った覚えがありませんよ?」
「な、なんてこった…と、いう事は オレの勘違い!?」
三月の話をまとめ、4人で導き出した答えはこうだ。
——— 回想 ———
「俺、あんたらのファンなんだ!これ、俺があんたらの為に作った楽曲!絶対に使ってくれよな!絶対だぞ!」
「!?
WAIT UP!……OH、もうあんなところに。なんともせっかちなファンですね」
まるで逃げるように姿を消したファンを追いかける事を諦めたナギ。
彼はその場で、預けられた楽譜に視線を落とす。
「……これは、素晴らしい曲です…!それに、似ています…。
ハルキの作る曲に」
「え?桜春樹がどうしたって?」
そこへ現れたのは、ナギと同じく帰宅したばかりの三月。ナギの肩口から、楽譜を覗き込んだ。
「おお!新曲じゃんかぁ!どれどれ……」
「ミツキ、おかえりなさい。この曲はさっき、」
「これ…めちゃくちゃイイじゃん!いやー、相変わらずお前の友達は良い曲作るよなぁ」
「!
YES!ハルキは、世界一の、素晴らしい作曲家です!」
「だな!さすが、ゼロの曲作ってただけあるぜ!歌うの今から楽しみだな!早速これ、社長達に見せに行こうぜ!」
「ワタシはお手洗いに寄ってから行くので、ミツキは先に行っていて下さい!」
「おう!分かった!」
もしナギが この時トイレに寄らず、三月と同じタイミングで社長の所に向かっていたなら…
運命は、変わっていたのかもしれない。