第33章 とりあえず土下座から行かせていただきまーす!!
「いやいや…社長丸め込むとか、あんた何者だよ」
社長室を後にした後、再び場所を私の仕事部屋へ移していた。
『いえ…。彼は、丸め込まれたふりをしただけです。社長の言葉をよく思い出してみて下さい』
“ とりあえず、クビにするのは待ってやる。だが、お前が作るのは他のアイドルの楽曲だ。それも、これまで以上の数。これまで以上のクオリティの物を持って来い。死ぬ気で働いてもらうぞ。
…その限られた時間の中で、お前が勝手にTRIGGER用の曲を作るというのなら、見てやらんこともない ”
『利用されるんですよ、貴方は』
「分かってる。それでも、俺にとっては願ってもない話だ。
あんたのおかげで、クビを免れた。こんな俺の為に…ありが」
『俺の為?それは違いますね。
私も、貴方を利用するに過ぎないのですから。せいぜい、私を触発出来るような良い曲を生み出して下さいね』
「!!
はは!上等だ。下克上、上等じゃねえか。
今度は、正々堂々あんたを超えてやるから。首洗って待ってろ」
わざと憎まれ口を叩く私を見て、日向は笑って言った。
コンコン。
ノックの音に、私と日向は揃って扉へ注目する。返事をする前に、扉は開かれてしまう。
私は内心焦った。私と日向が2人で話し込んでいるところを見れば、勘の良い者は気付くだろう。
今回の事件の犯人が、日向アキヒトであると。
入って来たのは、楽であった。彼は何か言いたげな視線で、日向を睨んだ。
『楽、今は取り込み中で』
「いや、いいんだ。彼は…俺が呼んだんだ」
日向は、楽の鋭い眼光から逃げる事なく 堂々正面に立った。