第33章 とりあえず土下座から行かせていただきまーす!!
「お前は、お人好しを通り越して馬鹿なのか!」
先程、日向から食らった言葉を 今度は社長からお見舞いされる。
『彼に非が無いとは言いません。ですが今回の事は、私の不用心が招いた事態です。
私が自分の立場というものを、甘く見ていた結果です。自覚が足りていなかった。もっと、ガードを固めておくべきでした』
「いえ。彼は、悪くないです。自分が、弱かったから…。
ですが、これからは心を入れ替えて頑張ります!TRIGGERの為、この会社の為に、尽力すると誓いますから!どうか…!」
彼は、バッと床にひれ伏した。そして額を地面に勢い良くぶつける。
「土下座なんて、格好だけだ。口では何とでも言える。
俺は知っている。人なんて、そう簡単に変われるもんじゃないって事をな!
俺は、もうお前を信用出来ない。それが答えだ」
社長は、頭を下げ続ける日向に背を向けた。しかし、彼はまだ頭を上げようとはしなかった。
『…もう一度信用する事が出来ないから、もう彼をここへは置いておけないんですか?』
「そうだ」
『なら “ 私の為 ” に、彼をここに置いて下さい』
「…お前の為、だと?」
社長が振り返る。日向も、驚きのあまり顔を上げた。
『社長は、今の私に何が必要なのか お分かりですか』
「さあな」
『知識でも、軍資金でもありませんよ。
私がもっと良い曲を作る為に必要なもの。それは… “ ライバル ” です!』
「お前はライバルが好きだな!!」正気か!
【24章 531ページ】
『事実です!私が曲作りに行き詰まった時!スランプに陥った時!誰に相談すれば良いのですか!畑違いの人間に相談など出来ないですよね?すなわち、作曲家ほどの適任者はいないでしょう!そう!同じ悩みを抱え、苦しむ私達はまさに “ ライバル ” !!好敵手と書いてライバル!!私には切磋琢磨出来る仲間が必要なのです!彼の生み出す楽曲から良い刺激を受ける事で、私の曲もまたさらなる高みへと』圧っ
「わ、分かったから、分かったからそれ以上近付いてくるな!暑苦しいわ!!」
私は熟知していた。彼が、意外な程に 圧に弱い事を。