第33章 とりあえず土下座から行かせていただきまーす!!
姉鷺が、あまりにもキツイ視線を日向に向けるものだから。彼は完全に萎縮してしまっている。これでは話を聞くのに支障を来しそうだ。
私は日向の体の向きを変えさせる。姉鷺に背を向けるように立ってもらったのだ。これで、あの鋭い視線が視界に入るのは私だけになる。
『まず、貴方の口から全てを聞かせて下さい』
「……俺が、やりました。すみませんでした」
「白々しい謝罪ね。目撃者がいなければ絶対に認めなかったくせに」
私は姉鷺を軽く睨む。それだけで “ 貴方は黙っていて下さい ” という私の意思は伝わったようだ。
『謝罪は後で聞きます。今は、全てを話して下さい』
「…社長に、俺が作った曲を全部ボツにされて…その後、あんたの仕事部屋の前を通りがかった。扉が開いてるのを見たら…つい、魔が差したんだ!
もし、あんたがとんでもないミスやらかしたら、また俺にTRIGGERの仕事が回ってくるんじゃないかって!」
『それで、データを盗んだ?』
「…そうだ。お前が楽曲の提出を落としたら、代わりに俺の楽曲が使われるかもしれない。そう、思った」
実際、もう少しで彼の目論見通りになるところだった。私にとっても、イレギュラーだったのは TRIGGERの助け。彼らがいなければ、もしかすると日向の楽曲が使われたかもしれない。
「でも、あんたは 短期間でまた最高の曲を作った。もう、分かったんだよ。あんたは、こんなふうに俺なんかを簡単に飛び越えて行く。どんな妨害をしたところで、一生手の届かないところにいるんだ。
もう、うんざりだ…どうせクビだし、潔くここを出て行く」
『逃げるんですか』
「…あぁ、そうだよ!情けねぇだろ!カッコ悪いだろ!なんとでも言えよ!俺はなぁ、お前なんか死ぬほど嫌いなんだよ!さっさと社長に突き出しやがれ!」
「最低ね…」
『……』
半ばヤケクソになった日向。私は冷めた目でそんな彼を眺めていた。
そしておもむろに…
彼の股間に手を伸ばした。