第33章 とりあえず土下座から行かせていただきまーす!!
春人の背中を見送った後、室内の様子を伺う。どうやら、今は中に誰もいないらしい。人の気配がなく、しん と静まっている。
これは、間違いなくチャンスだ。
俺はそう心の中で呟く。そして、体をドアから滑り込ませるようにして侵入を果たした。
光々と部屋を照らす照明。点けっ放しの空調。おそらく奴はすぐにここへ戻ってくるだろう。
それまでに、奴を失脚させられるようなネタを掴まなければ。
デスクの上には、開きっぱなしのパソコン。ロックもかかっていないようだ。
俺はそれに飛びつき、すぐさまキーボードを叩く。
「な、何か…何かないか!なんでも、なんでもいい!」
視界に、ある文字が飛び込んで来た。
《 オン大用 楽曲データ 》
すぐにピンと来た。
「これだ…、これだ!」
ダブルクリックで開くと、ほとんど完成したその曲が現れた。五線譜に並んだ音符を拾うより先に、俺は携帯付随のカメラを起動していた。
1ページ目。2ページ目。次々にシャッターを切る。
そして全てのデータを収めたと同時に、部屋を飛び出した。
その足で、トイレの個室へと駆け込んだ。すぐに手に入れたばかりのデータを確認する。
《 JUMP!UP! 》
同じ作曲家として、奴の楽曲の凄さは 痛いくらい理解出来る。それから、この曲がどれほどの手間と愛情をかけられたかも。
「…ふ、…ははは!このクオリティの曲を連続して作るのは、さすがのあいつでも不可能だろ…!
これは、奴の魂だ…。それが今、俺の手の中にある。
さぁ。これを、どうしてやろうか」
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