第33章 とりあえず土下座から行かせていただきまーす!!
【side 日向アキヒト】
どうして、こうなったのだろう。
「駄目だ駄目だ!こんな曲じゃ、オン大にはノミネートさえされないぞ!
春人の曲を超えてみせるから自分に作曲させろと手を挙げたのはお前だろう!
お前はうちの看板アイドルの顔に泥を塗る気か!」
提出した楽曲は10曲にも登る。これらは、2ヶ月後の新曲披露ライブの為に書き下ろしたもの。しかし、その全部の楽譜を社長はテーブルの上にばら撒いた。
俺は、小さく謝罪の言葉を口にする事しか出来なかった…
「くそ…くそっ、くそ…っ!!」
1年前までは、TRIGGERの曲を手掛けるのは俺だった。しかし、奴が現れてから全ての歯車が狂い始めた。
中崎 春人。その男のせいで、俺の人生はめちゃくちゃだ。
焦りからか、思うように曲も書けない。社長には見放される。このままでは、この会社に俺の席はなくなってしまう!
名誉挽回を計る為、今年のオン大用に楽曲を書き下ろした。しかし、それも全てボツにされた。
こうなったら、もう春人の方に失脚してもらう他ない。
「あいつが…あの、プロデューサーが悪いんだ…あいつが、俺の居場所を奪ったんだ…」
バラバラになった楽譜を握りしめ、ふらふらと廊下を歩く。そして、春人の仕事部屋の前で立ち止まった。
すると中から、忌々しい男が姿を現した。
『…はい。ええ、お世話になっております。
あ。その件でしたら一度、直接会ってお話をと 私も考えておりました』
電話を片手に、奴は部屋を後にした。
本当に、憎たらしい。
俺が全盛期の時でさえ、このような個室の仕事部屋など与えてもらった事はない。