第32章 TRIGGERだから
3人から、B5サイズの紙をそれぞれ受け取った。それを開く前に、私は顔を上げて彼らに問う。
『これは?』
「歌詞」
「龍の提案で、2週間前から用意してたんだ」
「少しでも、春人くんの役に立てればと思って」
天は、一度自分が渡した用紙を ひょいと取る。そして、手早く開いてから 再度こちらへ手渡した。
「ここにあるのはね。
陸達の歌った曲が、本当はボク達TRIGGERの為に キミが作った楽曲だったと知った時の気持ち」
楽もまた 天と同じように、私から一度紙を取り上げ。開いてからまた渡す。
「こんな所で、立ち止まってられねえだろ。俺達は、もっと上に行くんだ。ここには、そんな気持ちが書いてある」
まだ折り畳まれた状態の用紙は、あと一つ。龍之介の書いた物だ。
彼は丁寧に、カサリと広げると。笑顔と一緒に私の手に握らせた。
「俺はね、春人くんとTRIGGERの事を綴った。
きっと、どちらが欠けても、俺達が目指すTRIGGERには なれないだろうって、思うんだ」
まさか、彼らが私を案じて こんなものを用意してたくれていたなんて。
胸が熱くなるのを感じながらも、私は揃った3枚の用紙に視線を落とす。
『…………』
「あぁでも、役に立たなかったらごめんね」
「フレーズに合わせた振り付けも、一応考えてあるけど」見る?
「とにかく、曲作りの参考になりそうな事があったら全部言え!俺達に出来る事があったら何でもしてやる。
お前が、お前らしい曲を作る為なら どんな努力も惜しまないよ」
私は、3枚の用紙を手にピアノに向かう。
そして、楽譜スタンドにそれを立て掛けて…
最初の一音 “ G ” を指で弾いた。