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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第4章 …ねぇ。もしかして、泣いてる?




文字通り完璧に やり切った彼らが、また袖口へと帰ってくる。

TRIGGERがステージから姿を消したというのに、まだ観客の歓声は鳴り止まない。


しっかりと聞く者の心を掴んだ彼らが、視線を泳がせ私の姿を探す。

先頭を歩いている楽と、私の視線がかち合った。

こちらから歩み寄る気なんて全く無かったのに…。勝手に足が動いて、3人との距離を詰めていく。
言う事を聞かないのだ。左足と右足が。両足が、自分勝手に前へ前へ出る。

楽が、ゆっくりと片手を上げる動作が視界に入ると
自分も何故か手を上げていた。そして私達の距離がゼロになった時。

私と楽の、手の平がぶつかった。パァン!という派手な音が鳴った。未だ鳴り止まない拍手や歓声が、私達のハイタッチの音など簡単に打ち消した。


「は…、最高っ、」


まるで少年みたいに、満面の笑みで楽が言った。


「ん」

気が付くと、天も手の平をこちらに向けて待機している。

私がまた手を上げると、やはりそこ目掛けて彼の手が合わせられる。


「完璧、だったでしょ」


大きな瞳を片方閉じて、彼は囁いた。


「気持ち良かった!やり切ったよ」


龍之介はまさかの両手を上げていたので、私も仕方なく両手を上げる。

長身の彼から振り下ろされるような 両手のハイタッチは、結構痛かった。


「ほら、アンタも何か言ってあげなさいよ春人ちゃん」


姉鷺に背中を押されて、私は言葉を詰まらせる。

『え、あ…』


こういう時、私はいつも何と言っていたんだっけ。

最高?完璧?楽しめた?お疲れ様?格好良かった?

色んな単語がぐるぐると頭を回ったが。結局私は 思いついた中でも、最高の褒め言葉を放つ。


『…とっても、TRIGGERでしたよ!』

「「なんだそれ!!」」
「なにそれ」
「なによそれ!!」

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