第31章 こっちを見ろ!!
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「あいつの、あんな顔は初めて見た」
「春人くん…」
「……ボク達は、プロデューサーに甘え過ぎていたのかもね。
彼なら、なんとかしてくれる。待ってさえいれば、当たり前に曲を持ってくる。いつだって最高の結果をTRIGGERにもたらしてくれる。
いつの間にか、そう考えてなかった?」
「あぁ。俺も、そう考えてた。情け無い話だぜ。
あいつだって、普通の人間なのにな。いつから、完璧なプロデューサーだ なんて考えちまってたんだろうな」
「そうだね。いつだって、春人くんは俺達を助けてくれたから。それが当たり前だなんて、思ってしまっていたんだ。
なら今度は、俺達が春人くんを助ける番だろう?」
「ふ、そうだね。いつも彼に、負んぶに抱っこ じゃ格好悪過ぎる。
これを持って、早く彼に会いに行こう」
「今となっちゃ、2週間前の龍に感謝だな!あの時に龍が提案してなかったら、これも用意してなかっただろうし」
「俺は、春人くんの為に何か出来ないかって考えただけだよ。2人も、そうだろう?
これが役に立つと、良いんだけどね…」
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どれくらいの時間、ピアノと睨めっこしていたのだろう。長かったにせよ、短かったにせよ。作業は一向に進んでいなかったが。
溜息を吐いた時、ドアがノックされた。
いつもなら、作曲中にノックの音がしたところで気付けばしないのだが。今日はハッキリと聞こえた。
それだけ集中出来ていないのだと思い知らされるのだった。
しかし、返事をする気にはなれない。
私が鍵盤を見つめたまま静止していると、扉は開かれた。
入って来たのは、私が今 最も迷惑をかけている3人だった。