第31章 こっちを見ろ!!
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「今が、どういう状況なのか。分かっているな」
『……はい』
社長の眼光から逃げるように、目線を下に這わせる。
「お前は、3日で新しい曲を用意する。そう言った。だがどうだ。もうあれから2週間だぞ!
もう今年のオン大は諦めるしかない!!それだけじゃない。新曲発表までに残された時間は、あと2週間だ!
どう責任を取るつもりだ!」
「社長…」
『…申し訳、ございません』
姉鷺が、彼をなだめるように呟いたが。それは何の意味もなさなかった。
社長は、私が最も恐れている言葉を口にする。
「もういい。お前を信用したのが間違いだった。今回から、お前をTRIGGERの作曲家から外す」
『っ!!』
「姉鷺。すぐに他のツテを探せ。もうこいつの曲は使わん」
「社長!ちょっと待って下さい!」
「もう十分に待っただろう!待った結果がこれだ!未だかつてないピンチを招いただけとはな。
他の仕事があると思うなよ。俺は納期を守らん奴に仕事を任せたりなしないからな!演出も、振り付けもだ!
お前はもう金輪際、TRIGGERと関わる事はない」
ぐにゃりと。視界が歪んだ。気持ち悪い。吐き気がする。
姉鷺と社長は 何か会話を続けているが、私の耳には一切内容は入って来なかった。
『あれ…?私、ここで、何をしてるんだっけ』
曲も出来ていないのに。ここで突っ立って、何をしているんだろう。
曲を、作らなくては。
曲を、作らなくては。