第31章 こっちを見ろ!!
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帰りの車中。
姉鷺を含む俺達4人は、ぐったりと背もたれに身を預けていた。
「つ、疲れた…」
「慣れない事したからな…」
「2人とも情けないよ。あれくらいで」
「あら。そういう天も、目がいつもの半分くらいしか開いてないようだけど」
車内に、4人のため息が染みていった。
結局、500枚のパーカーの配布は あっという間に終了した。そこからは、行き渡らなかったファン達の対応に追われた。
手元にパーカーの届かなかったファン達から、不満の声が上がる事は一切なく。それどころか、感謝の言葉が多く聞かれたのだ。
「ちょっと見てこれ!もうネットで話題になってるわよ!」
姉鷺が、スマホの画面を俺達にも見えるようにして叫ぶ。
「TRIGGERの屋外ライブ、中止となるも 光る神対応…」
「前代未聞の、太っ腹!無料でパーカー配布」
「せめて、温かくして帰って欲しいという優しい心遣い」
天、楽、俺。の順番で記事の見出しを読み上げる。
ネットニュースとつぶやき掲示板というのは、どうしてこうも反映が手早いのだろうか。
「でもなんつーか…ちょっとだけ、安心した。
春人の奴、普段通りだっただろ。いつもと同じ 抜け目のない指示を俺達に出せるぐらいには、周りが見えてるって事だよな」
「たしかにね。新曲を作り直す事だけに、もっと必死になってると思ってた」
「春人くん、作業が進んでるといいけど…」
「あの子なら大丈夫よ!
社長と話をした時も、いつも通りだったもの。社長は鬼のように怒り狂ってたけど、彼は淡々と平然と言ってのけた。
“ 今までで一番の楽曲を生み出せば良いんでしょう。3日で仕上げます ” って。
だから、とにかく大丈夫。だって去年のブラホワの時なんて、TRIGGERのプロデューサーになってから、たったの3日で新曲作ったのよ?
だから大丈夫。信じて待ちましょ」
姉鷺の言葉に、俺達はしっかりと頷いた。
しかし…
それから1週間経っても2週間経っても、新曲が上がって来る事はなかった。
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