第31章 こっちを見ろ!!
「ははっ。いかにもあいつらしいな!おい姉鷺、どうせならタオルも配ろうぜ」
「ちょっと楽!勘弁してよ!」
「ボク達は、せめてファンに顔だけでも見せよう」
「そうだな!直接パーカーを渡せなくても、見送りぐらいは俺達にも出来る」
「ほら、そうと決まったら準備して!やる事は山積みよー!急いで急いで!」
姉鷺は、すぐに物販を担当するスタッフの元へ駆けて行った。俺達は俺達で、いつでも外へ出られるよう、支度を始める。
そんな中、陸が天に駆け寄った。
「天にぃ!オレ達にも、何か手伝える事ないかな!?」
「…手伝う?陸が?」
「うん!忙しそうだし、何でも言ってくれれば」
「っ、おいリク!やめ」
大和は陸を止めたが、ほんの少し遅かった。
天は、無邪気な陸に詰め寄る。
「ないよ。キミ達に出来る事は、なにもない」
「…てん、にぃ?」
「ここに集まってくれたファン達は、TRIGGERに会いたくて来たんだ。キミ達に出来る事なんて、何もない。
それから、さっきは言いそびれたけど。
ボク達も、もうすぐ新曲を発表するよ」
「あ…うん、知ってるよ…。1ヶ月後、新曲を披露するってテレビで言っ」
「オン大で最優秀賞を獲るのも、ボク達だ。
IDOLiSH7には、絶対に負けない」
天は、そう宣言すると 陸の隣を通り抜け外に出て行く。闘争心剥き出しの天が、部屋に残していった熱だけが燻っていた。
「天にぃ…オレが、無神経な事言ったから 怒ったのかな」
「違うんだ、陸くん。違うんだけど…。その、俺達にも 今ちょっと色々あって」
説明したいけど、説明出来ない。
それがこんなにも、もどかしい。
「悪いな。龍の言う通り、うちは今ごたごたしてて。今日のところはもう帰ってくれ」
「…へぇ。その ごたごたのせいで、おたくのセンター様はギラついてるわけだ」
「あぁ。そういうこ」
「ギラついてるのは…センターだけじゃ、ないみたいだけどな?」
「…二階堂。それが分かってんなら早く出てけ」
一触即発の楽と大和を、周りのメンバーや俺がなんとかなだめる。やがて少しの平静を取り戻した楽は、グッズのタオルを5枚 大和に手渡す。
「パーカーはファンに配るからお前達にはやれないけどな。
これ持って、引いてくれ。何も聞かないで」
「…ありがたく、使わせてもらうわ」